今日の恭麿
HIEDA NET Corpration
 > これは変だよ  > ホワイトカラーエグゼプション


 

昨年の夏に行きつけの居酒屋で夕飯を食べていたら、カウンター席の真ん中に座っていた酔い客が、自民党総裁選のニュースを見て、

  • 日本も国民投票で総理大臣を選ぶようにしなけりゃ駄目だ!あー、面白くねぇ!一部の人で勝手に決めてやがる!
と、話していた。これはおかしいと思い、
  • 何を言っているんだ!我々が選んだ結果じゃないか!昨年の秋(当時。今からは一昨年2005年の秋のこと。)の総選挙で自民党が第一党になったからだろう。当時自民党候補に投票していなくても選挙結果は民意の反映だから、我々が選んだことになるんだよ
と言ってみたが、頭悪くて理解できなかったらしく、一瞬黙ったもののまた、
  • 日本も国民投票で総理大臣を選ぶようにしなけりゃ駄目だ!あー、面白くねぇ!一部の人で勝手に決めてやがる!
を繰り返していた。

昨年の6月ころは、住民税額が決まり、国民健康保険料の支払い開始月でもあり、と言うことで、

  • 年金暮らしの年寄りの税金が上がり、医療費の控除も無くなり、弱いものいじめするなんて!
というお年寄りの文句が新聞の投書欄に溢れたが、このお年寄りたちもこの6月という未来を一昨年の秋に選択している。

こんな、自分たちの未来を自分たちが選択していることを意識せず、結果だけを文句ばかり言っている阿呆が多いね。人類、だんだん馬鹿になってきているように感じる。

でホワイトカラーエグゼプションである

NTTデータの松田次博氏のことばがよい

ホワイトカラー・エグゼンプションという考え方は、もっと高い年収、例えば1000万円を超える年収を受け取っている専門性や技能レベルの高いホワイトカラーに適用される概念である。このレベルになると、能力の高い人はさっさと仕事を済ませて帰宅できる。逆に能力が低い人は、遅くまで働いても能力の高い人ほどの成果は出せなかったりする。

ここで逆転が生じる。つまり「単価×労働時間」で給与を計算すると、能力の低い人の方が、能力の高い人より給与が高くなる訳だ。そこで「ホワイトカラー・エグゼンプション」という考え方の意味が初めて出てくる。

そのような概念を年収400万−500万円のホワイトカラーに適用するというのは、本来の原則から外れている。

能力に関係なく、そもそも仕事の量が多すぎるために労働時間が長くかかってしまっている状態に対して、残業代ゼロを適用するのは、単なる「サービス残業」の正当化だ。これは経営者の無能さを労働者に単に押しつけているだけのことである。

というもの。人件費を抑えるのに好都合な概念だから経済界が取り入れたがり、政治資金で政府=自民党を動かし、、国を挙げて
  • 残業代の節約化
  • サービス残業そのものを発生させない制度をつくる
ことをしようとしているのである。

更にこの制度の問題点は国民=有権者舐められていることだ。

キャノンの経営者である御手洗氏会長をしている経団連は当初、年収400万円以上の人を想定していたが、反対が強い手と見たのか政府案では年収900万円になった。これで一時的に反対は弱まるだろうが、一度でも法として導入されると次は省令のみで簡単に額を変更(=下げる)ことが出来る。
※ 消費税も率は変えないということで導入されたけれど、3%が5%になったよね。

この法案は今国会では提出されなかったが、きっとそのうち秋のに提出されるだろうと見られている。
※ 労働厚生大臣は秋にも提出しないと言っていたが・・・

ホワイトカラーエグゼプションが可決されたら、

  • 労働者同士のサービス残業時間の競争となって
  • チームで成果を出すなんて仕事がやりにくくなり
  • ぎすぎすした職場の空気で精神を病む人が増え、
  • 無茶な期日で仕事仕上げるなんてことになって体を壊す人が増え
  • 頭が筋肉の体力がある人に有利になり
なんてことになるんだろうな。

18世紀後半〜20世紀前半の労働者のように、

  • 低賃金で長時間働き
  • 体と精神を病み
  • 教育の機会も与えられず
なんてことになるような気がする。
※ ここまで悪くならないよ、って思うかい?それって少しなら悪くなっても、って労働環境低下を許容していないかい?
※ 僕は労働環境って右肩上がりになるべきで、少しでも右肩下がりになるってコトがおかしいと思うけれどね。

やっぱりみんな馬鹿になっているよ

知らない、と言うこともあるだろうが、知っていても、どこか変だぞ、ぐらい感じていても、目先のお仕事を失いたくないがために、使用者の無法な行為を受け入れている労働者諸君も多い。

  • 年俸制だから残業代ないよ、に納得したり、
    ※ 労働時間が一日8時間・週に40時間越えたら、使用者・雇用者・経営者には、 年棒 ÷ 12ヶ月 ÷ 22日 ÷ 8時間 = 単位時間当たりの賃金 の2割5分増の割増賃金を支払う義務がある。
  • 裁量労働制だから残業代(法定割増賃金)がつかない的な説明を受け入れたり、
    ※ 裁量労働に該当する職種でない時にも「裁量労働だから」なんていう、使用者・雇用者・経営者がいるぜ!
  • みなし労働時間制だから残業代は4万円一定額だよ、的な説明を受け入れたり、
    ※ 月給 ÷ 22日 ÷ 8時間 × 残業時間 × 1.25 = 本来支払いを受けるべき割増賃金
    がみなし残業代を超えていたら当然その超過分を、使用者・雇用者・経営者は支払う義務がある。
  • 経営側としての管理業務をしていないのに管理職だからと言う言葉で割増賃金対象外と思っていたり
    ※ 姐さんのように管理職と言う言葉にステータスを感じちゃう人もいるらしく・・・
    ※ 役職名が部長課長だとしても実態が経営管理業務でなければ、使用者・雇用者・経営者には、 月給 ÷ 22日 ÷ 8時間 = 単位時間当たりの賃金 の2割5分増の割増賃金を支払う義務がある。
    ※ 残業をした次の日は自分の判断でいわゆる重役出勤ができる程度の裁量がないと労基法41条でいう管理監督者には当たらないぞ!。
  • 行政官庁の届けも無く、労働時間の事前通知も無いのに変形労働時間制を導入しているという説明を鵜呑みにして割増賃金の支払いを受けなかったり、り、
    ※ 一年制・一月制・一週間制いずれも、
    • 労働時間の事前通知、もしくは、(労働者の2/3もしくは労働組合との)事前の書面による協定
    • 行政官庁への事前の届出
    • 一日あたりの労働時間が8時間を越えても一週間あたりでは40時間以内
    • 週に40時間を越えたら割増賃金は必要
    なんだ。つまり「今日残業してくれよ」は変形労働制に当てはまらない。
  • 勤務先が労災保険に入っていないからという説明で健康保険で治療しようとしたり、
    ※ 労働時間内の怪我は労災である。健康保険法第一条により健康保険の適用外である。
    ※ 勤務先が労災保険に加入していなくても使用者・雇用者・経営者には無過失責任があり、治療の全費用を負担する義務がある。
    ※ 負担の軽減を狙って労災保険制度がある。使用者・雇用者・経営者の強制加入制度である。加入していない事業者は違法である。
    ※ そんな経営者の都合を労働者に押し付けるな!である。三浦傳君も本橋君もそこのところ判っていないよね。
  • 偽造請負・二重派遣を知っていても文句を言わなかったり、
  • 派遣法では事前面接は禁止なのにどこの派遣会社でも事前面接していたり、
  • 実態は「労働契約」なのに「請負契約」させられていたり、
    ※ 職場に出勤した労働時間を管理監督されている場合は請負ではなく労働だ。
  • 労基法改正という名の労働者受難の改悪が提案されたり、
なんてことが起こっているのも、労働者側が馬鹿だからじゃなかろうか?

現在の労働基準法には労働者の権利として最低の基準が書かれている。これを権利として得るために、多くの人が血を流してきた。そうやってやっとのことで手に入れた権利を、血を流した人たちの苦労を知らないからかもしれないけれど、僕らは簡単に手放そうとしているように感じる。

  • 忙しくて選挙にも行けなかったよ、なんて自慢げに話す奴は馬鹿だと思うし、
  • 誰に入れても同じさ、なんていって選挙に行かない奴は民主主義の権利を放棄しているし、
    ※ 誰に入れたらいいかわかんない阿呆というのが実態なのだろうけれど・・・
  • 「選挙に行かないという意思表示もある」なんてかっこつけて言う奴も民主主義の権利を放棄しているし、
    ※ まったくかっこよくないのだが・・・
    ※ 最低投票率が無い選挙で無投票が意思表示なるわけ無いだろ!
    ※ 誰に入れたらいいかわかんない阿呆というのが実態なのだろうけれど・・・
  • あー、忙しくて昼飯も食えなかったよ、なんてかっこいいつもりで言っている人はまったくかっこよくないし、
  • あー、忙しくて昼飯も食えなかったよ、をメンバーに強要するリーダは管理能力ないし
  • 正規従業員やパートやバイトに対して「労働基準法なんて有ってないもんだからさ。」と深夜割増時間割増を支払わない違法なことする雇用者・使用者は犯罪者なんだし、
  • でも声を上げると会社で冷遇されちゃうし、とか、仕事回ってこなくなっちゃうし、とか、お仕事失っちゃうし、だから黙ってよう、なんて態度が自分だけでなく他の人にも迷惑な態度だってコトがわかっていないし、
  • ということでその違法行為を許容しちゃう(正規・非正規問わず)従業員がいたりして、
やっぱり僕らは馬鹿になってきているんだろうな。

初出 Feb 24 2007
最終更新日 Feb 25 2007


 

 (C)2003-2007 HIEDA NET Corporation All rights reserved.